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シリーズ「小規模事業者が学ぶストレスチェック制度」【第3回】ストレスチェック制度で気をつけること

この記事は「マイベストプロ静岡」の弊社コラムにも掲載しています

過去2回のコラムでは、ストレスチェック制度が50人未満の事業場でも義務化されたこと、その背景、そして厚生労働省から公表された「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」のポイントをお伝えしました。
今回は、制度を導入する上で気をつけるべき点と、これまでに見えてきた制度の課題について解説します。

小規模事業場で気をつけるべき“最も重要なポイント”

小規模事業場でストレスチェック制度を実施する際に気をつけるべきポイントは、一つです。
この制度の目的が、メンタルヘルス不調の未然予防であることを見失わないこと
この目的を見失うと、制度導入が単なる負担となるだけでなく、従業員のメンタルヘルス不調を見逃してしまう可能性があります。その結果、組織にとって損失しか生まない制度になってしまいかねません。

メンタルヘルスに対する正しい理解

未然予防という目的を実現するためには、まず経営者や管理監督者が、メンタルヘルスに対する正しい認識を持つことが重要です。
メンタルヘルスとは「こころの健康」を指し、身体の健康とは異なる側面を持ちながらも、密接に関連しています。そして、身体の不調が誰にでも起こり得るように、こころの不調もまた、誰にでも起こり得るものです。この前提を理解することが、制度を正しく機能させる第一歩となります。

方針の明確化と従業員への共有

そのうえで重要なのが、ストレスチェック制度を実施する目的や方針を、従業員に対して明確に伝えることです。前回ご紹介した「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」には、事業場による方針表明(メッセージ)の例が掲載されています。これらを参考にしつつ、自社の状況に合わせて、自らの言葉で伝えることが大切です。制度の意図が正しく伝わるかどうかで、その効果は大きく変わります。ポイントは「このメッセージで、従業員が安心してストレスチェックを受けられるかどうか」と自問すると良いでしょう。

実務上で最も重要なのはプライバシーの保護

小規模事業場において、実務上特に重要となるのがプライバシーの保護です。人数が少ない組織では、個人の特定が容易になること、また情報が共有されやすいといったリスクが高まります。この点は、制度導入当初に50人未満の事業場が努力義務とされた背景の一つでもあります。そして、この課題に対応するために公表されたのが「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」です。マニュアルの理解は、そのままリスク管理につながります。

労働基準監督署への報告義務に関する注意点

実務上の注意点として、ストレスチェック結果の労働基準監督署への報告義務の判断があります。報告義務の基準は、「常時使用する労働者が50人以上かどうか」であり、ストレスチェックの対象者とは一致しません。そのため、短時間労働者(パート・アルバイト)や派遣労働者がいる事業場では、人数のカウント方法に注意が必要です。派遣労働者に対するストレスチェックの実施義務は派遣元企業にあります)

自社実施を検討する際のポイント

マニュアルでは、ストレスチェックの実施は外部機関への委託が推奨されています。一方で、自社での実施を検討する事業者もあるでしょう。その場合は、制度要件を満たしているか慎重に確認する必要があります。まず、ストレスチェックの「実施者」は、医師・保健師等と定められています。この「等」には、歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師が含まれ、所定の研修修了が必要です。
また、自社内で「実施者」と、その補助業務を担う「実施事務従事者」を選定する必要がありますが、 人事権を持つ管理職(社長や人事部長など)は従事できないといった制限があります。これは、取り扱う情報が極めてセンシティブであるためであり、守秘義務も課されます。違反した場合には罰則の対象となります。

ストレスチェック制度の課題

厚生労働省による効果検証では、ストレスチェック制度には一定の効果が確認されています。例えば、

  • 約7割の労働者が「自身のストレスに気づけた」と回答
  • 面接指導を受けた労働者の過半数が「面接は有効だった」と回答
  • といった結果が示されています。一方で、課題も明確です。公益財団法人「日本生産性本部」による調査(『第12回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果』2025年)では、「集団分析結果の活かし方」が最も多い課題として挙げられています(65.3%)。集団分析はストレスチェック制度が目的とするメンタルヘルス不調の未然防止の方策のうちの一つであり、ストレスチェックの結果を集団ごとに分析して、職場環境の改善に活かすことを指します。ですが制度がスタートして10年が経過しても、チェックの結果を職場の環境改善にフィードバックできていない事業場が多いという課題も浮き彫りになっています。

    「測る」ことと「活かす」ことは別である

    この結果からストレスチェック制度は、ストレス状態を“測る”ことには優れている一方で、 結果を“活かす”ことまでは自動的にはつながらないという限界があると言えそうです。本来の目的である「未然予防」を実現するためには、ストレスチェックによる集団分析結果の解釈から、職場環境の改善に活かすところまで、踏み込む必要がありますし、ストレスチェック制度を有効に活用できるか否かのポイントになります。
    なお集団分析結果は、集計・分析の単位が10人を下回る場合には、個人が特定されるおそれがあることから、原則として事業者は集団分析結果の提供は受けられません。

    ストレスチェック制度における弊社の立場

    ストレスチェック制度において、弊社が関われるのは実施そのものではなく、その周辺領域です。具体的には、以下のような支援を行っています。

    1.メンタルヘルス研修の実施:メンタルヘルスに関する啓発や、ストレスチェック制度を有効に実施するための土台作り

    2.日常的な相談窓口としての対応:ストレスチェック制度の実施以外に日常的にメンタルヘルス不調を未然に防止するための支援

    3.ストレスチェック結果を踏まえた職場環境改善支援:ストレスチェックによる分析を職場環境改善に繋げる支援

    特に3.の職場環境改善支援については、メンタルヘルスに限らず、弊社は組織課題の整理と解決支援を強みとしています。組織の悩みや違和感を「課題」として構造的に捉え、改善につなげるサポートが可能です。
    まずは小さな違和感からでも構いません。お気軽にご相談ください。

    シリーズ「小規模事業者が学ぶストレスチェック制度」

    【第1回】小規模事業場も対応が急がれるストレスチェック制度
    【第2回】ストレスチェック制度とは?小規模事業者が押さえる基本と実務ポイント

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