
「仕事が自分の中に入る」〜 新社会人と企業に求められること〜
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この記事は「マイベストプロ静岡」の弊社コラムにも掲載しています。
4月。新しい環境に身を置き、期待と不安が入り混じる中で社会人生活をスタートさせた方も多いのではないでしょうか。企業のSNSには、新しい仲間を迎えた喜びと、新社会人への期待、エールを送る投稿が多く見られます。
しかしこれからの時期、多くの新社会人が直面するのが「思っていたのと違う」という感覚です。いわゆる「リアリティ・ショック」と呼ばれるものです。仕事の難しさ、人間関係の複雑さ、自分の未熟さ。そうした現実に触れ、戸惑いや落ち込みを感じるのは、決して特別なものではありません。
今日は、そんな時期にこそお伝えしたい、ひとつの考え方と、現場で出会った若者の言葉、そして企業にできる関わりについてお伝えします。
「仕事が自分の中に入る」これは書籍「岡田昌毅著『働くひとの心理学』ナカニシヤ出版、2013年、p.17」で、黒井千次氏が用いた表現として紹介されています。就職してからある程度の仕事がわかるようになった状態であり
それは、現場に身を置き、本当の意味で「自分の仕事」を持つようになった時、初めて理解できるものである
と解説されています。まさにこの春の新社会人が、これから迎えるものです。しかし仕事が自分の中に入るまでには時間と経験が必要であり、その過程においてリアリティ・ショックを感じる方もいるのではないかと思います。リアリティ・ショックの渦中にいると、「自分は向いていないのではないか」と感じてしまいがちです。しかし多くの場合、それは能力の問題ではなく、まだ仕事が自分の中に入っていないだけだと、捉えることも必要なのだと思います。
私がキャリア支援の現場で出会った相談者の方が、こんな話をしてくれました。当時、彼はまだ社会人2年生でしたが、「この人はすでに仕事が自分の中に入っているんだな」と感じる方でした。彼は新社会人に大切なポイントとして、3つ挙げてくれました。
1.メモをとること
2.目の前の仕事だけでなく、全体も見渡すこと
3.たまには自分を振り返ること
彼自身の実体験から語られたその言葉は、とてもシンプルでありながら、本質を突いるのではないでしょうか?
これら3つのポイントは、単なる仕事術ではありません。リアリティ・ショックと向き合うための有効な手段でもあります。
リアリティ・ショックは、「理想と現実のギャップ」から生まれます。
そしてそのギャップは、理解と経験によって少しずつ埋まっていきます。
ここまで新社会人側の視点で見てきましたが、同時に企業側の関わりも重要ではないでしょうか?リアリティ・ショックは、個人の問題として語られがちですが、実際には「個人と組織の関係性」の中で生まれるものだと考えられます。だからこそ企業には、「早く戦力化すること」だけでなく、「仕事が本人の中に入っていくプロセスを支える」という視点が求められます。
メモをとることを個人任せにするのではなく、
といった“学び方”そのものを伝えることも重要です。新社会人の中には、メモを取る習慣がなかったり、メモをうまく取れない方もいるかと思います。さらにメモをもとに対話する機会を設けるだけでも、業務を理解する質は大きく変わるのではないでしょうか?
新社会人は、自ら全体像を把握することが難しい状態にあります。だからこそ企業や組織は
を言語化して伝える必要があります。全体像が見えることで、仕事は単なる指示ではなく、「意味のある経験」に変わります。
振り返りは、必ずしも全ての新社会人が十分にできるとは限りません。組織側が意図的に設計し、提供することも大切でしょう。
こうした機会を通じて、「何ができるようになったのか」を言語化させることが、自己効力感の形成につながることでしょう。
新社会人に対して、「なぜできないのか」と問いかける場面があるかもしれません。しかしその問いを、「どうすれば仕事が本人の中に入るのか」という視点に変えるだけで、関わり方は大きく変わります。育成とは、知識やスキルを与えることだけではないのだと思います。その人の中に仕事が根づいていくプロセスに伴走することではないでしょうか?
新社会人にとってのリアリティ・ショックは成長の入り口です。一方で企業にとっても、「人が育つとは何か」を問い直す機会といえます。しかし現場では、育成が個人任せになり、本人と企業の間にすれ違いが生まれてしまうことも少なくありません。本来必要なのは、新社会人が「仕事が自分の中に入るプロセス」を支える関わりと仕組みではないでしょうか?
私たちは、個人へのキャリア支援と、組織への対話を通じて、育成を“仕組み”として支える支援も行っています。新社会人の成長と定着を確実なものにするために。
自社の育成に課題を感じていらっしゃるようでしたら、ぜひ一度ご相談ください。