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正解のない時代にキャリアを創造する【第4回】人材版伊藤レポートとは?人的資本経営との関係をわかりやすく解説

この記事は「マイベストプロ静岡」の弊社コラムにも掲載しています

日本が成熟社会へと移行し、少子高齢化が進む中、さらに技術革新によって先行きが見通しにくい時代となっています。こうした時代に、私たちはどのように働き、どのようにキャリアを築いていくべきなのでしょうか。前回は「人的資本経営」という言葉を題材にしました。今回は、その考え方と深く関わる「人材版伊藤レポート」についてご紹介します。

「人材版伊藤レポート」とは?なぜそう呼ばれるのか

「人材版伊藤レポート」という名称は印象に残りやすい一方で、「そもそも何なのか?」「なぜ“人材版”なのか?」「なぜ“伊藤”なのか?」と疑問に感じる方も多いかもしれません。
“伊藤レポート”と呼ばれる文書は、2026年5月時点で5つ存在します。大きく分けると、「伊藤レポート」と「人材版伊藤レポート」に分類されます。これらはいずれも、経済産業省が設置した研究会・検討会における議論を、一橋大学の 伊藤邦雄 氏が座長として取りまとめたものです。なお、「伊藤レポート」という名称は通称であり、それぞれに正式名称があります。

「伊藤レポート」(2014年8月)
 正式名称:『持続的成長への競争力とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係構築〜』
「伊藤レポート2.0」(2017年10月)
 正式名称:『持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会 報告書』
「人材版伊藤レポート」(2020年9月)
 正式名称:『持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書』
「人材版伊藤レポート2.0」(2022年5月)
 正式名称:『人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書』
「伊藤レポート3.0」(2022年8月)
 正式名称:『サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)報告書』

いずれも、少子高齢化や第四次産業革命※の中で、日本企業が持続的に成長していくためには何が必要かを議論した報告書です。その中でも、「人材版」と名付けられたレポートは、“人的資本”を中心テーマとしてまとめられています。

※第四次産業革命:AI、IoT、ビッグデータ、ロボットなどの技術革新による社会変化を指す言葉として、内閣府の経済白書などで用いられています。

人材版伊藤レポートが示す「人的資本経営」の考え方

本連載のテーマは「キャリアの創造」です。そのため、ここでは「人材版伊藤レポート」に注目します。では、「人材版伊藤レポート」とはどのようなレポートなのでしょうか。私自身は、次の一文に集約できると考えています。

「企業の持続的成長には、人材をコストではなく“資本”として捉え、育成・活用することが重要だと提言したレポート」

では、なぜ企業は“人”に投資する必要があるのでしょうか。私は、その理由は「人にはそれぞれ固有の“好き嫌い”や価値観があるから」だと考えています。

人は、自分の「好き」や「関心」と結びついた仕事において、力を発揮しやすくなります。そこには成果だけでなく、仕事への没頭感や組織への愛着も生まれます。さらに、人の価値観や関心は、生涯を通じて変化し、成熟していくものです。

この「時間をかけて成熟していく」という点は、モノ・カネ・情報といった他の経営資源にはない、人材特有の性質だと言えるでしょう。だからこそ、人材への投資は、企業にとって大きな価値を生み出す可能性があります。そして、その“成熟”を支える営みこそが、キャリア形成なのだと、私は考えています。弊社がキャリア支援や人的資本経営に注目する理由も、ここにあります。

「人材版伊藤レポート2.0」とは?実践編としての特徴

2022年に公表された「人材版伊藤レポート2.0」でも、人材をコストではなく投資対象として捉える考え方は共通しています。一方で、2.0ではより実践的な内容が重視されています。レポートでは、人的資本経営に関する関心が高まる中で、「具体的に何をすればよいのか」という声が多く寄せられたことが背景として述べられています。そのため、「人材版伊藤レポート2.0」では、
・人的資本経営を実践するための視点
・具体的な施策や考え方
・先進企業の事例
などが整理され、実践ガイドに近い内容となっています。

人材版伊藤レポートは中小企業にも有益なのか?

一方で、これらのレポートを読むと、中小企業、特に地域密着型の小規模事業者にとっては、「自分たちとは別世界の話だ」と感じる場面もあるかもしれません。例えば、人材版伊藤レポートでは、経営トップ5C(CEO、CSO、CHRO、CFO、CDO)の連携が重視されています。特にCHRO (Chief Human Resorce Officer:最高人事責任者)の活躍に、大きな期待が込められています。一方で地域密着で経営する中小企業においては、少人数の経営陣で運営されている会社や、実質的に社長一人で経営を担っている会社も少なくないでしょう。また、レポート自体にも、「主な対象は上場企業、特にグローバル市場で戦う企業を想定している」と明記されています。ただし、その一方で、次のようにも述べられています。

非上場企業においても、自社を取り巻く環境を踏まえ、自社のビジネスモデル、経営戦略と連動した人材戦略を策定・実行し、持続的な企業価値の向上を目指すことには変わりがなく、本報告書の基本的な考え方は参考になるものと考えられる。

つまり、「人材をコストとして見るか、それとも未来への投資として見るか」という考え方そのものは、企業規模を問わず重要だということです。
弊社では、人材への投資とは、単に教育費を増やすことではなく、「個人の価値観やキャリアの成熟を支えること」だと考えています。そして、それが結果として、個人だけでなく、組織や地域社会にとってもプラスになると考えています。

次回以降は、「人材版伊藤レポート」「人材版伊藤レポート2.0」のポイントを、中小企業の現場課題に翻訳しながらご紹介していく予定です。

シリーズ「正解のない時代にキャリアを創造する」
【第3回】人的資本経営が問い直すキャリアのあり方

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