
障害者雇用率が2.7%へ引き上げ―「採用」から「活躍できる職場づくり」の時代へ
受付時間:月〜金 9:00〜18:00

2026年7月1日から、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。また、雇用義務の対象となる企業も、従業員40人以上から37.5人以上へと広がりました。対象となる企業では、採用計画の見直しや社内体制の整備を進めているところも多いでしょう。
しかし、この制度改正は「何人雇えばよいか」という数字だけの問題ではありません。企業に求められているのは、「障害のある人が能力を発揮し、長く働き続けられる職場」をつくることです。
日本における民間企業の法定障害者雇用率は、これまで段階的に引き上げられてきました。民間企業で働く障害者は約70万4,600人と過去最多を更新しています。しかし、法定雇用率を達成している企業は46.0%にとどまり、半数以上の企業が目標を達成できていません。さらに、未達成企業の約57%は障害者を一人も雇用していない状況です。
こうした現状を受け、厚生労働省ではハローワークによる専門支援や障害者就業・生活支援センターなどを通じ、企業と障害者双方を支援しています。また障害者雇用に関する好事例集も公開しています。制度は企業に義務を課すだけではなく、「雇用できる企業を増やす」ための支援策も充実させています。
障害者雇用の実例として私が印象に残っているのは、愛知県豊橋市にある「久遠チョコレート」です。ここではさまざまな障がいを持った人たちが、オリジナルブランドのチョコレート作りに取り組んでいます。
代表を務める夏目浩次さんは障がいのある人たちの賃金の低さに衝撃を受けて、この現状を変えたいと奮闘を続けています。夏目さんがチョコレート作りに取り組む理由はまず、チョコレート作りは失敗しても、温めれば何度でもやり直すことができること。次にチョコレート作りには多くの工程があることをうまく利用して、一人ひとりが得意な作業を分担できるようにしたこと。
夏目さんの取り組みは、東海テレビのドキュメンタリー番組『チョコレートな人々』として制作・公開されました。そして「2021年日本民間放送連盟賞テレビ部門」でグランプリを受賞しています。私はこの映画の中で伝えられている「障害者が働きやすい職場を考えたら、誰もが働きやすい職場になった」という趣旨のメッセージが、とても印象に残っています。障害者雇用に全力で取り組んできた久遠チョコレートだからこそ、見出せた貴重な教えのように感じられます。
近年、企業では外国人材、育児・介護との両立、高齢者、性的マイノリティなど、多様な背景を持つ人材と共に働く機会が増えています。障害者雇用も、その流れの中にある「ダイバーシティ経営」の一つと考えるべきなのだと思います。
私はキャリアコンサルタントとして、多くの働く人の相談を受けています。相談者は障害のある方だけではありません。育児や介護との両立、外国人材、メンタルヘルスなど、働く人が抱える事情は実にさまざまです。
共通して感じるのは、「一人ひとりに合わせた働き方を考えること」は、特定の人だけを支援することではないということです。誰か一人が働きやすくなる工夫は、多くの場合、職場全体の働きやすさにつながります。
障害者雇用率が2.7%へ引き上げられた今日、この制度改正を「義務」として受け止めるだけでなく、「より良い職場づくり」を見直すきっかけとして考えてみてはいかがでしょうか。