
若者が会社を辞める理由から考える、これからの人材定着に必要な職場づくり
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「若手社員が入社しても、数年で辞めてしまう」
「採用しても人が定着しない」
このような悩みを抱える企業は少なくありません。
特に中小企業では、採用した人材が短期間で離職すると、採用活動にかかった費用だけでなく、教育にかけた時間や現場への負担も大きくなります。
一方で、若者が会社を辞める理由は、単純に「仕事が嫌になった」「最近の若者は我慢できない」といったものではありません。
そこには、働き方、人間関係、仕事内容、将来への不安など、さまざまな要因が関係しています。
では、若者はなぜ会社を辞めるのでしょうか。
また、企業はどのような職場づくりを進めれば、若手社員の定着につながるのでしょうか。
今回は、厚生労働省が実施した「令和5年若年者雇用実態調査」の結果から、若者の離職理由と、これからの人材定着に必要な取り組みについて考えます。
「令和5年若年者雇用実態調査」は、事業所側と若年労働者側の双方から、若者の雇用状況や就業に関する意識を把握することを目的として実施された調査です。
調査基準日は令和5年10月1日で、個人調査は令和5年11月22日から11月30日に実施されました。
この調査でいう「若年労働者」とは、調査基準日時点で満15歳から34歳までの労働者を指します。
調査結果によると、若年労働者が就業している事業所の割合は73.6%でした。
過去の調査結果を見ると、
となっており、若年労働者がいる事業所の割合は減少傾向にあります。
また、企業規模による違いも見られます。
若年労働者がいる事業所の割合は、従業員数30~99人規模では92.9%となっています。
さらに規模が大きくなるほど割合は高くなり、従業員数1,000人以上の事業所では99.4%に達しています。
一方で、従業員数5~29人規模の事業所では69.5%にとどまっています。
少子高齢化によって若年人口が減少する中、特に中小企業にとっては、若い人材を採用することだけではなく、採用した人材が長く活躍できる環境をつくることが重要な経営課題になっています。

では、企業は若者を採用する際、どのような点を重視しているのでしょうか。
調査では、新規学卒者、中途採用者ともに最も多かった回答は、
でした。
次いで、
が続いています。

これらの結果から分かることは、多くの企業が採用時点で完成された専門人材を求めているわけではないということです。
もちろん、業務に必要な専門知識や経験は重要です。
しかし、特に若年者採用において企業が重視しているのは、仕事に向き合う姿勢や、周囲と関わりながら成長していく力です。
社会人として働き始める時点で、すべての能力を身につけている人はいません。
むしろ、学び続ける姿勢や、周囲と協力しながら課題を乗り越える力が、その後の成長につながります。
また、「コミュニケーション能力」は、過去の調査と比較して増加傾向にあります。
職場では、年代や価値観の異なる人と関わりながら仕事を進める必要があります。
そのため、業務能力だけではなく、周囲との関係づくりや職場への適応力も重要視されていると考えられます。
一方で、中途採用者では「業務に役立つ職業経験・訓練経験」を重視する割合が、新規学卒者より高くなっています。
転職を考える若者にとっては、「今まで何を経験してきたのか」「その経験を次の職場でどのように活かせるのか」を整理することが重要になります。
では、実際に若者はどのような理由で最初の勤務先を辞めているのでしょうか。
調査では、最初に勤務した会社を辞めた主な理由として、
が上位となっています。(複数回答、3つまで)
ここで注目したいのは、離職理由が給与だけではなく、「働き方」や「人間関係」「仕事内容との相性」にも大きく関係していることです。
企業側から見ると、「給与を上げれば社員は辞めない」という単純な問題ではありません。
働く時間、有給休暇を取得しやすい雰囲気、上司や同僚との関係性、自分の仕事に意味を感じられる環境など、総合的な職場環境が若者の定着に影響しています。

このような若年者の離職傾向に対して、企業ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。
調査では、若年労働者の定着のために企業が実施している取り組みについても調査しています。
多く取り組まれているものとして、
などが挙げられています。
特に注目したいのは、「職場での意思疎通の向上」です。
採用時にコミュニケーション能力を重視する企業が多い一方で、入社後には社員同士が関係を築きやすい環境づくりが求められています。
また、価値観や働き方が多様化する現在では、一人ひとりの違いを認め、安心して働ける職場づくりも重要になっています。

若年正社員に対して、今後の転職希望の有無を調査した結果では、現在の会社から今後「転職したいと思っている」と回答した割合は31.2%でした。
一方で、「転職したいと思っていない」と回答した割合は30.2%となっています。
つまり、若年正社員のおよそ3人に1人が、将来的な転職を選択肢として考えていることになります。
また、「転職したいと思っている」という割合は、
と増加しています。
もちろん、転職を考えること自体が問題というわけではありません。
現在では、転職によって自分の経験や能力を活かす機会を広げたり、自分らしい働き方を実現したりすることも可能な時代になっています。
一方で、入社して間もない時期に「思っていた仕事と違う」「職場が合わない」と感じた時、十分に状況を整理しないまま退職を選択してしまうことには注意が必要です。
社会人として初めて経験する職場では、学生時代には想像できなかった悩みや戸惑いに直面することがあります。
仕事への向き合い方、上司や同僚との関係、自分の得意なことや苦手なこと。
こうしたことを理解していく過程そのものが、キャリア形成の大切な一歩になるのではないでしょうか。

では、転職を考えている若年正社員は、何を求めているのでしょうか。
調査では、現在の会社から転職したい理由として、
などが挙げられています。
労働条件に関する理由が上位になっていますが、ここで考えたいのは、単純に「条件が悪いから辞める」というだけではないということです。
例えば、求人票では休日の日数や給与額を確認できても、実際の職場の雰囲気や休暇の取りやすさ、人間関係までは分かりません。
制度として有給休暇があっても、周囲が取得していなければ利用しづらいと感じることもあります。
また、給与についても、金額そのものだけではなく、「自分の努力や成長がどのように評価されているのか」という納得感が大きく影響します。
企業が取り組むべきことは、条件面を整えることだけではありません。
社員が「自分はこの会社で成長できている」「自分の仕事には意味がある」と感じられる環境をつくることも、人材定着には重要です。

ここまでの調査結果から見えてくるのは、企業にとって突然届けられた退職届であっても、本人の中では、その前からさまざまな悩みや迷いが積み重なっている可能性があるということです。
「仕事が自分に合わない」
「職場の人間関係に悩んでいる」
「将来のキャリアが見えない」
こうした悩みを抱えた時に、早い段階で誰かに相談できる環境があれば、本人の選択肢は広がります。
もちろん、すべての離職を防ぐことが正しいわけではありません。
本人にとって、新しい環境へ挑戦することが必要な場合もあります。
しかし、本来避けたいのは、「悩みの原因が整理できないまま、苦しさから逃れるためだけに退職を選択すること」です。
そのため企業には、社員が悩みを抱えた時に、安心して相談できる環境づくりが求められています。
弊社は、働く人のキャリアを支援する会社です。
キャリアとは、単に「どの会社で働くか」ということだけではありません。
特に経済学からキャリアを研究する金井壽宏氏は、キャリアを「長い目で見たときの仕事生活のパターン」と表現しています。
つまりキャリアとは、一つひとつの職業経験や職業に関する選択の積み重ねによって形成されていくものとしています。
「パターン」という言葉には、その人らしさ、その人の好き嫌いが関係するという意味が含まれています。
若手社員が初めての職場で悩むことは、決して珍しいことではありません。
求人情報を確認した上で入社したとしても、「思っていた仕事と違う」と感じることがあります。
しかし、その違和感には、
「自分は何を大切にして働きたいのか」
「どのような環境なら力を発揮できるのか」
を考えるためのヒントが隠れていることがあります。
キャリアコンサルティングでは、相談者の話を丁寧に聴きながら、本人自身も気づいていない悩みや価値観を整理していきます。
決して、
「あなたにはこの仕事が向いていません」
「この仕事に転職した方がいいです」
と答えを提示するものではありません。
相談者自身が、自分で考え、自分で納得できる選択ができるよう支援することが、キャリアコンサルタントの役割です。
結果として、自分らしく生きる(自分の好き嫌いを理解し、多かれ少なかれ発揮して生きていく)ことに繋がります。
「社員のキャリアを支援すると、転職を促してしまうのではないか」
「社員の悩みは本人が解決するものではないか」
このように考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、キャリア支援の目的は、社員を会社から送り出すことではありません。
社員が自分自身の仕事や将来について考え、主体的に働けるようになることです。
自分の役割や成長の方向性が見える社員は、目の前の仕事にも前向きに取り組むことができます。
また、企業にとっても、社員の考えや悩みを理解することは、職場環境の改善や人材育成につながります。
特に中小企業では、社員一人ひとりの存在が組織に与える影響は大きく、人材の定着と活躍は企業の未来そのものに関わります。
キャリア支援とは、社員を辞めさせないための仕組みではありません。
社員が自分らしく働き、企業の中で力を発揮するための土台づくりです。
令和5年若年者雇用実態調査から見えてくるのは、若者の離職には、労働条件だけではなく、人間関係や仕事内容、将来への不安など、さまざまな要因が関係しているということです。
人材定着のために企業が取り組むべきことは、単に待遇を改善することだけではありません。
社員が安心して相談でき、自分のキャリアについて考えられる環境をつくることが重要です。
若者が「この会社で働き続けたい」と思える職場づくり。
それは、社員を会社につなぎ止めることではなく、一人ひとりが成長し、活躍できる環境を整えることなのではないでしょうか。
キャリア支援を通じて、人と組織がともに成長できる職場づくりを支えていくこと。
それが、これからの時代に求められる人材定着のあり方だと考えています。