
キャリアとは(4)〜キャリアに不可欠な4つの共通要素〜
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弊社コラムではこれまでに、「キャリア」という言葉の意味や考え方について、3本の記事でご紹介してきました。
第2回では、キャリアを理解するための「3つのポイント」をお伝えしましたが、今回は渡辺三枝子氏らが、キャリア研究において多くの定義を分析した結果、共通して見出された「4つの共通要素」をご紹介します。(1)
これは、第2回でお伝えした3つのポイントと対立する考え方ではありません。新たに「人と環境との相互作用」という視点を加えることで、特に企業や団体など組織の中で働く方にとっては、キャリアをより立体的に理解できる考え方です。
今回ご紹介する「キャリアに不可欠な4つの共通要素」は、渡辺三枝子氏らが、さまざまなキャリアの定義を分析した結果、共通して見出したものです。
第2回の記事でご紹介した3つのポイントに、新たに加わるのが「人と環境との相互作用」です。
私たちは、多くの時間を職場という組織の中で過ごしています。また、個人事業主やフリーランスであっても、顧客や取引先、さらには社会情勢や経済環境など、さまざまな環境との関わりの中で仕事をしています。
つまり、キャリアは自分一人だけで形づくられるものではありません。周囲の人との出会い、組織から求められる役割、社会の変化など、多様な環境との関わりの中で育まれていくものです。
キャリアが個人から切り離して存在し得ないのと同様に、キャリアが形成されるためには、それを取り巻く環境の存在も欠かせません。
キャリアには、時間という軸があります。
これまでの記事では、キャリアとは「生涯にわたる連続的な過程(process)」であることをご紹介しました。
私たちは日常生活の中で、「これまでのキャリア」と言えば経歴を、「これからのキャリア」と言えば進路や将来像を思い浮かべることが多いでしょう。
しかし、過去・現在・未来は、それぞれが独立して存在しているわけではありません。
過去の経験が現在の自分を形づくり、現在の選択が未来のキャリアにつながっています。この一本の流れとして人生を捉えることが、キャリアを理解する上で重要な視点です。
「空間」という言葉は、キャリアと結び付けると少し分かりにくく感じるかもしれません。
ここでいう空間とは、「活躍する場」や「果たしている役割」と考えると理解しやすいでしょう。
過去の記事でも、キャリアは「空間的な広がり(space)をもつもの」としてご紹介しました。
私たちには、職業人としての役割だけでなく、家庭では家族として、地域では住民として、あるいは趣味の仲間やボランティア活動など、さまざまな立場があります。
これら一つひとつの経験は、職業とは直接関係がないように見えても、自分自身の考え方や価値観、人との関わり方を育み、キャリアを形づくる大切な要素になります。
個別性について、過去の記事では「自分らしい生き方(life style)を志向すること」としてご紹介しました。
私は、この個別性を説明する際に、「好き嫌い」という言葉をよく用いています。
「好き嫌い」は、経営学者の楠木建氏が著書のタイトルでも多く用いている表現です。食べ物の好き嫌いであれば、「好き嫌いせず食べなさい」と言われるように、あまり好ましくないイメージがあるかもしれません。
しかし、キャリアにおける「好き嫌い」は少し意味が異なります。
何に興味を持つのか、どのような働き方を望むのか、どのような価値観を大切にしたいのか。そうした「好き」「大切にしたいこと」は、その人らしさを形づくる重要な要素です。
一方で、私たちはこうした「好き嫌い」を、意外と素直に言葉にできていないのではないでしょうか。
私たちは、何らかの組織や社会、地域などの環境の中で生活しています。そのため、キャリアも自分を取り巻く環境との相互作用によって大きく影響を受けます。
もちろん、自分の「好き」や「こうありたい」という思いが、すべて思い通りになるとは限りません。むしろ、現実には思い通りにならないことの方が多いでしょう。
だからといって、環境に合わせることだけを優先してしまえば、自分らしさを発揮することは難しくなります。
一方で、自分の希望だけを押し通そうとしても、組織や社会との関係の中ではうまくいかないことがあります。
大切なのは、自分を取り巻く環境から求められるニーズと、自分自身が大切にしたい価値観や希望を、どのように重ね合わせていくかということです。
環境に合わせるだけでもなく、自分だけを優先するのでもない。その両者の接点を見つけながら歩んでいくことこそが、自分自身のキャリアを主体的に創造していくことではないでしょうか。
弊社が個人へのキャリア支援を軸としながらも、その先に「組織と個人の双方を支えること」を目指しているのも、この考え方に基づいています。
組織においては従業員であっても、人は誰もがその人の人生の経営者である、経営者であれば自社(自分)を何を目指して経営するのか?自社(私)の役割は何であるのかを理解することが大切です。
会社は経営理念を掲げますが、個人には不要なものなのでしょうか?
組織の中という環境であればこそ、より個人が経営理念を深く考え、さらに組織からのニーズといかにマッチングできるのかを考えなければなりません。
また経営も個人のニーズを汲み取って自社にどう生かせるのかを従業員と一緒に考えることは、価値観が多様化していく時代には欠かせません。
そのためにはまず一人ひとりがキャリアのニーズ(好き嫌い)を理解することが不可欠であり、経営にとってもプラスになるののなのです。
会社が個人のキャリア形成を支援する意味は、ここにあります。
今回の記事では、キャリアに不可欠な4つの共通要素についてお伝えしました。
過去にご紹介した3つのポイントに環境との相互作用を加え、さらに個別性(好き嫌い)との関係から、会社組織が個人のキャリア形成を支援する意味についてもご紹介しました。
一人でも多くの経営者の方が、会社、個人、そして社会のWin-Win-WInを生み出すために、自社の従業員のキャリア形成を支援を始めるきっかけになれば幸いです。
《参考文献》
(1)渡辺三枝子 編著『新版 キャリアの心理学[第2版] キャリア支援への発達的アプローチ』ナカニシヤ出版,2018年,18~21頁
《過去の記事》