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長く働くことは、本当に幸せなのか?―敬老の日に考える、これからのキャリア

9月には「敬老の日」があります。

毎年、敬老の日になると、高齢者の健康や長寿、地域とのつながりなどについて考える機会が増えます。一方で、9月には「老人の日」という日もあることをご存じでしょうか。

実は、この二つには少し違った意味があります。

「敬老の日」と「老人の日」は何が違う?

「敬老の日」は、毎年9月の第3月曜日に設けられている国民の祝日です。長年にわたり社会に尽くしてきた高齢者を敬い、長寿を祝う日とされています。

一方、「老人の日」は9月15日です。

こちらは国民の祝日ではなく、「老人福祉法」に基づいて設けられた日です。そして9月15日から21日までが「老人週間」とされています。

つまり、敬老の日が「高齢者を敬い、長寿を祝う」という意味合いを持つのに対して、老人の日・老人週間には、高齢者の福祉について考え、高齢者が自らの生活や健康について考えるとともに、社会全体で高齢者を支えることについて考えるという意味があります。

普段あまり意識することのない二つの日ですが、どちらも「年齢を重ねること」について考えるきっかけになります。

そして、そこからもう一歩踏み込んで考えてみたいことがあります。

「年齢を重ねても、長く働くことは、本当に幸せなのでしょうか?」

「何歳まで働くか」だけで考えていないだろうか

人生100年時代と言われるようになり、高齢者の就労について考える機会も増えました。

定年後も働く。

70歳になっても働く。

できるだけ長く働く。

こうしたことが、前向きな生き方として語られることもあります。

もちろん、仕事を続けることにはさまざまな意味があります。

収入を得ること、人とのつながりを持つこと、社会との接点を持つこと、自分の能力を発揮すること。そして、「誰かの役に立っている」という実感を得ることもあるでしょう。

しかし、ここで一度立ち止まってみる必要があります。

「働けること」と「働きたいこと」は、同じでしょうか。

また、「長く働くこと」と「自分らしく生きること」も、必ずしも同じではありません。

働くことに生きがいを感じる人もいれば、仕事以外のことに時間を使いたい人もいます。

定年後も同じ仕事を続けたい人もいれば、勤務時間を短くしたい人、これまでとは違う仕事をしたい人、地域活動や学びに時間を使いたい人もいます。

大切なのは、「高齢者は働いたほうがいい」「定年後も働くべきだ」と一律に考えることではないのではないでしょうか。

キャリアは「働き続けること」だけではない

キャリアという言葉を聞くと、「仕事」や「職業」を思い浮かべる人が多いと思います。

しかし、キャリアをもう少し広く捉えると、それは一人ひとりが人生の中で経験してきたこと、担ってきた役割、周囲との関係、そしてこれから選んでいく生き方などを含めたものとして考えることができます。

そう考えると、定年はキャリアの終わりではありません。

むしろ、それまで当たり前だった働き方や役割を見直し、これからの人生をどのように組み立てていくのかを考える一つの節目と言えるでしょう。

「会社員」という役割を終えて、地域の活動に参加する。

これまで培った経験を、若い世代に伝える。

新しいことを学ぶ。

家族との時間を増やす。

あるいは、もう一度働く。

どれが正解ということではありません。

大切なのは、「自分にとって、これから何を大切にしたいのか」を考えることです。

年齢を重ねるほど、キャリアは個別的になる

若い頃には、「昇進したい」「専門性を高めたい」「収入を増やしたい」といった、比較的わかりやすい目標を持つことがあります。

しかし、年齢を重ねるにつれて、仕事だけではなく、健康、家族、人間関係、経済的な事情、地域とのつながりなど、さまざまな要素がキャリアに影響するようになります。

だからこそ、年齢を重ねるほど、

「○歳なら、こうするべき」

という一つの正解では語れなくなっていきます。

これは、高齢期だけの話ではありません。

キャリアにはもともと一人ひとりの違いがあります。そして、人生の状況が変われば、自分にとって自身の歩みに対する意味づけも変わってくるのだと思います。

「長く働く」から「どう働くか、どう生きるか」へ

これからの高齢社会を考えるとき、「何歳まで働けるか」という視点はもちろん重要です。

しかし、それだけでは十分ではありません。

「何歳まで働くか」ではなく、

「どのように働きたいのか」

そして、

「働くことを含めて、これからどのように生きたいのか」

を考えることも大切です。

さらに、それを考えるのは高齢者になってからでなくてもよいはずです。

50代、40代、30代のうちから、これからの人生で仕事をどのように位置づけたいのかを考えておく。

そうすれば、定年という一つの節目を「突然訪れる仕事の終わり」として迎えるのではなく、自分のキャリアを次の段階へ移していく機会として捉えられるかもしれません。
「アイデンティティ」の概念を提唱したエリクソンは、成人期最後の発達課題を「統合性」とし、これまでの歩みを問い直し、自分の人生の責任は自分にあるという事実を受け入れることだとしています。
若いうちから自分の人生について内省しておくことが、その備えにもなるはずです。

敬老の日は、高齢者を敬い、長寿を祝う日です。

そして老人の日・老人週間は、高齢者の生活や福祉について考える機会です。

この9月を、自分自身が年齢を重ねたときのことを考える機会にもしてみてはいかがでしょうか?

長く働くことが幸せなのか。

それとも、

自分にとって幸せな働き方、生き方とは何なのか。

その答えは、年齢や世間の基準ではなく、一人ひとり違っていてよいのだと思います。

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自動車業界で開発業務を経験し、産業カウンセラー / 国家資格キャリアコンサルタント取得。グループアプローチによる課題解決支援も経験する。2023年にキャリアデザイン・メンタルサポート株式会社設立。静岡県を中心に企業向け人材定着・職業能力向上、メンタルヘルス支援を実施。またキャリア理論や公的機関の調査・法制度を分かりやすく解説し、企業経営者と働く人の双方に役立つ情報発信を心掛けています。

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