
全国労働衛生週間から考える「健康に働く」とは?心と体、キャリアを支える職場づくり
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10月1日から7日までは、全国労働衛生週間です。
令和8年度のスローガンは、
「ひとりひとりが貴重な人材 心も体も健やかに みんな生き生き健康職場」
です。
全国労働衛生週間は、働く人の健康管理や職場環境の改善などについて意識を高め、職場で自主的な取り組みを進めることを目的として、1950年から毎年実施されています。今年で77回目となります。
今年のスローガンを眺めていると、私は「健康職場」という言葉の前に置かれた、
「ひとりひとりが貴重な人材」
という言葉が気になります。
企業にとって、人はもちろん大切な存在です。
しかし、「大切な人材」という言葉を、単に「会社にとって必要な戦力」という意味だけで捉えてしまうと、少し違ったものになってしまうのではないでしょうか。
働く人の健康を考えるとき、健康診断や生活習慣、作業環境など、身体面に目が向きやすくなります。
もちろん、それらは重要です。
一方で、厚生労働省が今年度の全国労働衛生週間で示している課題には、メンタルヘルス対策、長時間労働による健康障害の防止、治療と仕事の両立、高年齢労働者の健康管理なども含まれています。
つまり、働く人の健康は、身体だけの問題ではありません。
「仕事が自分に合っているのか」
「職場で自分の力を発揮できているのか」
「この働き方をこれからも続けていけるのか」
「仕事と生活をどう両立していくのか」
こうしたことも、働く人の心身の状態と無関係ではありません。
ここで、少し考えてみたいことがあります。
健康診断で問題がなく、病気もなく、休まず働いている。
それだけで、その人は「健康に働いている」と言えるでしょうか。
もちろん、身体的な健康は大切です。
しかし、人が仕事を続けていくためには、それだけでは足りません。
自分の仕事に意味を感じられること。
自分の持っている力を活かせること。
周囲との関係の中で、自分の居場所を感じられること。
そして、自分のこれからについて考えられること。
こうしたものも、「生き生き働く」ことにつながっているのではないでしょうか。
だからこそ、今年のスローガンの
「心も体も健やかに」
という言葉は、単なる健康管理にとどまらないものとして受け止めたいと思います。
2026年4月から、治療と就業の両立支援に関する指針が適用されています。
厚生労働省は、疾病を抱えながら働く人が、心身の健康を確保しながら能力を発揮できる環境を整えることの重要性を示しています。
これは、「病気になった人をどう支援するか」という問題だけではありません。
人は、年齢を重ねます。
家族の状況も変わります。
体力や価値観が変化することもあります。
仕事に対する考え方が変わることもあります。
そう考えると、働く人の健康を支えるということは、現在の状態を維持するだけではなく、
「これからどのように働いていきたいのか」
を考えられる環境をつくることでもあるのではないでしょうか。
「ひとりひとりが貴重な人材」という言葉には、もう一つ大切な意味があると思います。
それは、人は一人ひとり違うということです。
得意なことも違います。
苦手なことも違います。
仕事に求めるものも違います。
大切にしたい価値観も違います。
体力や健康状態も違います。
キャリアの希望も違います。
会社が一律の「理想の社員像」をつくり、それに人を合わせていくのではなく、一人ひとりの違いを理解しながら、本人と職場の双方にとってよりよい働き方を探していく。
そこには、キャリア支援の視点が関係してきます。
キャリアという言葉から、「昇進」や「転職」を思い浮かべる人もいるかもしれません。
しかし、キャリアはもっと広いものです。
これまでどのように働いてきたのか。
何を大切にしてきたのか。
どんな経験から、自分らしさが形づくられてきたのか。
そして、これからどのように働き、どのように生きていきたいのか。
こうしたことを考えることも、キャリアを考えることです。
その意味では、キャリアについて考えることは、「自分はこれからも、この働き方を続けていけるだろうか」と立ち止まって考える機会にもなります。
それは、心身の健康を守るための一つの予防的な取り組みにもなり得るでしょう。
もちろん、働く人の健康に対する責任を個人だけに負わせることはできません。
長時間労働、過度な業務負担、職場の人間関係、ハラスメント、働き方の柔軟性など、組織側が取り組まなければならない問題もあります。
一方で、職場環境を整えるだけですべてが解決するわけでもありません。
同じ職場で働いていても、感じ方や受け止め方は一人ひとり異なるからです。
だからこそ、
個人と組織の両方から職場を考えること
が重要なのだと思います。
今年のスローガンにある「みんな生き生き健康職場」は、会社が社員の健康を一方的に「管理する」ことではなく、一人ひとりと組織が一緒になって、よりよい働き方をつくっていくことなのかもしれません。
全国労働衛生週間は、ポスターを掲示したり、研修を行ったりするだけの一週間ではありません。
せっかくの機会ですから、職場でこんな問いを投げかけてみてはいかがでしょうか。
– 最近、心身ともに無理をしている人はいないだろうか
– 仕事の負担や人間関係について、相談できる環境があるだろうか
– 一人ひとりが自分の強みを活かせているだろうか
– 年齢や健康状態、家庭の事情が変わっても働き続けられるだろうか
– 「これからどんなふうに働きたいか」を話せる職場になっているだろうか
健康診断の数値だけでは見えない「働く人の健康」があります。
そして、本人にしか分からない「働きづらさ」や「これからへの不安」もあります。
だからこそ、働く人の声を聴くことが大切です。
一人ひとりが貴重な人材だからこそ、一人ひとりの心と体、そしてその人のキャリアにも目を向ける。
全国労働衛生週間を、そんな職場づくりについて考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。