
シリーズ「仕事の地図」から、キャリアを描く【第3回】「適職」を一つ探さなくてもいい――自分と仕事との関係をつくるキャリア
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これまで2回にわたって、仕事選びについて考えてきました。
第1回では、「仕事を知ること」
人は知らないことに興味を持てません。
そして、知らない職業は、そもそも選択肢になりにくい。
だからまず、仕事の地図を広げてみる。
第2回では、「自分を知ること」
自分は何に興味を持つのか。
何を大切にしたいのか。
どんな経験やスキルを持っているのか。
そうしたことを知ることで、仕事との接点が見えてきます。
では、
仕事を知って、自分を知ったら、その次は何をすればいいのでしょうか。
私は、ここで「自分にとっての適職を一つ見つけよう」と考える必要はないと思っています。
仕事選びでは、
「自分に合う仕事は何だろう?」
「自分の適職は何だろう?」
と考えることがあります。
もちろん、自分に合った仕事を考えること自体は悪いことではありません。
ただ、「自分にとって最も適した仕事が、どこかに一つ存在していて、それを見つけ出せそう」と考えると、仕事選びはとても難しくなります。
世の中には、非常に多くの仕事があります。
その中から、自分の性格、興味、価値観、能力、経験、生活環境などに完全に一致する「唯一の仕事」を探し出す。
それは、現実的にはかなり難しいことではないでしょうか。
そもそも、仕事も自分自身も変化します。
今は興味がない仕事でも、経験してみたら面白くなるかもしれません。
今は得意ではないことも、経験を重ねればできるようになるかもしれません。
反対に、今は好きな仕事でも、環境が変われば考え方が変わることもあります。
だから私は、「適職を探し当てる」という発想だけにこだわる必要はないと考えています。
では、どう考えればいいのでしょうか。
一つは、
「自分ができることを広げていく」
という考え方です。
例えば、最初は人前で話すことが苦手だった人が、仕事でプレゼンを何度も経験するうちに、少しずつ話せるようになる。
パソコンが苦手だった人が、仕事で必要になって使っているうちに、いつの間にか資料作成が得意になる。
人と関わることが苦手だと思っていた人が、ある仕事を通して、「実は一対一で話すことは好きなのかもしれない」と気づく。
こうしたことは、仕事を始める前には分からないことがあります。
つまり、
「自分にできる仕事を探す」だけではなく、「仕事を通じて、できることを増やす」
というキャリアのつくり方もあるのです。
もう一つ、私が大切だと思っていることがあります。
それは、
「好きなことを仕事にする」だけが、好きなことを生かす方法ではない
ということです。
例えば、人と話すことが好きな人がいたとします。
その人が必ずしも「人と話すことそのもの」を職業にする必要はありません。
製造の仕事をしながら、後輩を教えることにやりがいを感じるかもしれません。
事務の仕事をしながら、周囲の人の相談に乗ることに楽しさを感じるかもしれません。
営業の仕事をしながら、お客様の話を聞き、課題を一緒に考えることに面白さを感じるかもしれません。
つまり、
職業名だけを見て「自分には合わない」と判断する必要はない
ということです。
同じ職業でも、実際の仕事内容は職場や役割によって違います。
そして、その仕事の中で、自分の好きなことや得意なことを発揮する方法も違います。
ここは、仕事選びを考えるうえで、私が特に伝えたいところです。
たとえ、
「これが自分にとって最高の仕事だ」
と思えなかったとしても、その仕事の中で自分らしく働くことはできます。
「この仕事のどこなら、自分の好きなことを生かせるだろう?」
「今の自分にできることは何だろう?」
「これから、何ができるようになりたいだろう?」
と考えてみる。
仕事そのものを「好きか嫌いか」で二分するのではなく、仕事との関わり方の中に、自分らしさを見つけていくのです。
ここまでの話を整理すると、仕事選びには少なくとも三つの視点があります。
世の中にはどんな仕事があるのか。
まずは仕事の地図を広げる。
自分は何に興味を持ち、何を大切にし、何ができるのか。
そして、これまでどんな経験をしてきたのかを振り返る。
知っている仕事と、自分の興味や価値観、能力、経験を組み合わせてみる。
その仕事の中で、自分にできることを増やしていく。
そして、自分の好きなことや得意なことをどう発揮できるのかを考える。
私は、これがキャリアを考えるということなのではないかと思っています。
つまり、キャリアは、
「自分にぴったりの正解を探し当てること」
ではなく、
「自分と仕事との関係をつくりながら、少しずつ可能性を広げていくこと」
なのではないでしょうか。
仕事を選ぶときには、どうしても、
「この仕事は自分に合っているか」
という視点になりがちです。
でも、もう一つ、
「この仕事と、自分はどんな関係をつくっていけるだろう」
という視点を持ってみてもいいのではないでしょうか。
最初から完璧に合う仕事を探すのではなく、
仕事を経験する。
できることを増やす。
人との関わりの中で、自分の得意なことに気づく。
好きなことを仕事の中でどう発揮できるか考える。
そして、必要なら次の仕事や役割につなげていく。
そうやって、自分のキャリアをつくっていく。
この3回のコラムでは、
仕事を知ること
から始め、
自分を知ること
を考え、
最後に、
適職を一つ探し当てるのではなく、自分と仕事との関係をつくっていくこと
について考えてきました。
もちろん、「自分に合う仕事」を考えることは大切です。
でも、その答えが最初から一つに決まっているとは限りません。
知らなかった仕事を知ることで、興味が生まれる。
経験することで、できることが増える。
できるようになることで、仕事の見え方が変わる。
仕事の中で好きなことを発揮することで、仕事そのものへの感じ方が変わる。
そんな変化も、キャリアの一部です。
だから私は、仕事選びに迷ったとき、
「自分にとっての適職は何だろう?」
と問い続けるだけではなく、
「自分は、どんな仕事との関係をつくっていきたいのだろう?」
と考えてみることをおすすめします。
仕事は、ただ「選ぶもの」ではありません。
その仕事の中で、自分の可能性を広げ、自分らしい働き方をつくっていくものでもあるはずです。
<シリーズ「仕事の地図」から、キャリアを描く>
【第1回】仕事選びに迷ったら「仕事の地図」を広げてみよう
【第2回】仕事選びでは「自分を知る」ことも大切ーーjob tagの自己診断ツールを活用する