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ジョブ・カードのキャリア・プランシートの書き方|経験から自分らしいキャリアの方向性を考える

前回のコラム「ジョブ・カードの様式2・様式3の書き方」では、ジョブ・カードの様式2(職務経歴シート)と、様式3-1職業能力証明(免許・資格)シート及び様式3-2 職業能力証明(学習歴・訓練歴)シートの書き方について、詳しくお伝えしました。

「キャリア」について考える際には、自分の来し方を振り返り、将来を展望するという内省が欠かせません。様式2と様式3を作成することは、自分の来し方を振り返るための材料を整理することでもあります。

これらの材料をもとに、将来を展望するために用意されているのが、様式1のキャリア・プランシートです。

ジョブ・カードを作成する際には、まず様式2と様式3を作成し、その後に様式1に取り組むことをおすすめします。過去の経験を振り返ってから将来を考えることで、自分の経験や能力、価値観などを手がかりに、これからのキャリアを考えやすくなるからです。

この記事では、ジョブ・カードの様式1を書く際に大切にしたい考え方と、具体的な問いかけについて解説します。

なお、様式1には2通りありますが、このコラムでは、就業経験のある方が使う「様式1-1 キャリア・プランシート(就業経験がある方用)」について解説します。
様式1-2は「就業経験のない方用」とされており、学生や社会人として就業したことがない方に使っていただくシートになっています。

ジョブ・カード 様式1-1 キャリア・プランシート(就業経験がある方用)

1. 様式1を書く前に、様式2と様式3をよく眺めてみる

改めて、自分のキャリアについて考える際に大切なのは、自分の来し方を振り返ったうえで、将来を展望することです。

様式2と様式3(様式3-1と様式3-2)を書き上げたら、まずは、それぞれのシートを少し眺めてみるとよいと思います。

様式2では、これまでの職務経験を整理しました。どのような仕事を担当し、どのような役割を果たし、どのような経験を積んできたのか。そして、その経験を通じて自分が感じたことも書き出しました。

様式3では、職務経験や学習などを通じて身につけた知識や技能、能力を整理しました。

これら3枚のシートに書き出された言葉から、自分の「来し方」がどのようなものであったのか、少しでも感じ取ってみましょう。

もう少し具体的に言えば、「私はこんなことが好きだ」「こんなことは嫌いだ」「これはあまり関心がないな」といった、自分自身の感じ方に目を向けてみるということです。

私がキャリアについてお伝えする際に大切にしているのが、この「好き嫌い」です。

ここで意識していただきたいのは、「良し悪し」で判断するのではなく、自分自身の「好き嫌い」を感じ取ることです。

自分の経験や能力を評価することだけが、過去を振り返る目的ではありません。自分が何に喜びを感じ、何に違和感を覚え、何に関心を持ってきたのか。そうしたことを、まずは素直に感じ取ってみてください。

2. 自分の経験・能力、動機や欲求、価値観を考える

ジョブ・カードの様式1は、これからのキャリアについて考えるためのシートです。このシートでは、5つの項目について記入していきます。

ここからは、それぞれの項目について、記入する際のポイントをお伝えします。

1. 価値観、興味、関心事項等:自分が大切にしたいことを考える

ジョブ・カード 様式1-1より

最初の項目は「価値観、興味、関心事項等」です。記入欄には「大事にしたい価値観、興味・関心を持っていることなどを記入」と補足されています。

しかし、かなり抽象的な問いかけなので、どのように書けばよいのか分からない方もいらっしゃるかもしれません。

そのような場合でも、問いかけを読んだときに心に浮かんだことを、まずは言葉にしてみていただきたいと思います。

その際に材料となるのが、様式2と様式3です。特に、いずれのシートでも、一番右側の列に書き出した言葉を意識して眺めてみてください。

そのうえで、例えば、次のような問いを自分に投げかけてみます。

– これまでの経験から考えて、これからどのようなことに楽しさや喜び、充実感を感じられそうか
– 今の自分は、どのような仕事や活動に興味を持ち、もっと取り組みたいと思っているのか
– 反対に、どのような仕事や状況に違和感を覚えそうか
– 仕事をするうえで、これから大切にしたいと思うことは何か
– どのような状態であれば、自分らしく働けていると感じるか

様式2や様式3に書き出したことは、過去の経験をしていた当時に感じたことかもしれませんし、今になって振り返ることで気づいたことかもしれません。

いずれにしても、それらを手がかりに、今の自分、そしてこれからの自分にとって大切にしたい価値観や興味・関心について考えてみてください。

ここで書き出す言葉は、様式2や様式3に書いたことと変わらない場合もあれば、違ったものになる場合もあるでしょう。以前と変わらないことがよい、あるいは変わることがよいというわけではありません。

繰り返しになりますが、ぜひ意識していただきたいのは、良し悪しではなく好き嫌いです。そして、自分の感じ方は人それぞれであるということです。

2. 強み等:自分の経験や能力を理解する

ジョブ・カード 様式1-1より

2つ目の項目は「強み等」です。記入欄には「自分の強み、弱みを克服するために努力していることなどを記入」と補足されています。

「強み」と言われると、特殊な能力や、ほかの人よりも優れていることでなければならないと考えてしまう方もいるかもしれません。

しかし、そのように考える必要はありません。

仮に、強みをほかの人と比べて優れている点だと考えたとしても、例えば、ある作業をミスなく正確にこなせることや、周囲の人に気を配れることなどを、同じ基準で客観的に評価するのは簡単ではありません。

仮に数値で評価したとしても、自分より高い評価を得る人はいるでしょう。そのような他人との比較ばかりを気にしていても、自分のキャリアを考えるうえでは、あまり意味がありません。

それよりも、自分らしさとして感じられることは何かという視点で考えてみていただきたいと思います。

例えば、次のような問いが考えられます。

– これまでの仕事で、自分なりにうまくできたと感じることは何か
– どのような場面で、自分の能力を発揮できたと感じるか
– 周囲の人から評価されたことや、頼りにされたことは何か
– 困難な状況を乗り越えるために、自分なりに工夫したことは何か
– 苦手なことや課題に対して、努力したことや、現在努力していることは何か

ここで注意したいのは、強みを資格や専門知識だけに限定しないことです。

例えば、問題が起きたときに原因を丁寧に調べること、周囲の意見を聞いて調整すること、地道に仕事を続けることなども、仕事で生かせる強みになり得ます。

また、自分では当たり前だと思っていることが、ほかの人から見ると強みである場合もあります。これまでの経験を具体的に振り返ることが、自分の強みを発見するきっかけになります。

さらに、強みを考える際には、自分が好きだと感じることと、自分の能力を発揮できることの関係にも目を向けてみましょう。

自分が好きなことと得意なことが重なる部分があれば、それは今後のキャリアを考えるうえでの手がかりになります。一方、得意であっても、必ずしも好きだとは感じないこともあるでしょう。そうした違いも、自分自身を理解するための材料になります。

3. 将来取り組みたい仕事や働き方等:これからの方向性を考える

ジョブ・カード 様式1-1より

3つ目の項目は「将来取り組みたい仕事や働き方等」です。記入欄には「今後やってみたい仕事(職種)や働き方、仕事で達成したいことなどを記入」と補足されています。

この項目に取り組むときには、最初から具体的な職業名や役職、明確な目標を決める必要はありません。

まずは、1つ目の項目で考えた自分の価値観や興味・関心と、2つ目の項目で整理した自分の強みを手がかりにしてみましょう。

例えば、これまでの経験から、次のようなことに気づいたとします。

– 人の話を聞き、問題を一緒に解決することが好きだ
– 自分の専門知識を深め、仕事に生かすことに喜びを感じる
– 周囲の人と協力しながら、よりよい方法を考えることが得意だ

こうした気づきがあれば、今後の仕事を考える際にも、人を支援する仕事、専門性を高められる仕事、チームで課題解決に取り組む仕事など、方向性を考えることができます。

もちろん、現在の役職や役割を必ず変えなければならないわけではありません。今の仕事のなかで新しい役割に挑戦したり、仕事の進め方を工夫したりすることも、キャリアの方向性を実現する方法です。

また、転職や仕事探しをしている方であれば、自分の希望だけでなく、生活上の条件や、応募先の組織から求められる役割なども考慮する必要があるでしょう。

組織で働いている方にとっては、自分の希望だけでなく、周囲からの期待を考えることも大切です。様式1-1には、周囲からの期待を直接記入する専用の欄はありませんが、別のメモ用紙などに書き出しておくとよいでしょう。

自分がやりたいことと、周囲から期待されていること。この両方を考えることは、組織で働く人がキャリアをデザインするうえで重要なポイントです。

私が企業でキャリアに関する研修を行う際には、同じ部署の人たちや同年代の人たちなどと話し合う時間を設けています。周囲からの期待については、一人で考えるだけでなく、周囲の人たちと話し合うことで、より多くのことに気づけるからです。

参考コラム
シリーズ「好き嫌い」でつながるキャリアと経営【第5回】私が会社から期待されていることは何か? キャリア・サバイバルという考え方

4. これから取り組むこと等:目指す方向に向けた行動を考える

ジョブ・カード 様式1-1より

4つ目の項目は「これから取り組むこと等」です。

記入欄には「今後向上・習得すべき職業能力や、その方法などを記入」と補足されています。この前に書いた「将来取り組みたい仕事や働き方等」を実現するために、今の自分に足りないもの、身につけなければいけないことを書き出します。

またこの項目の捉え方は、人によってさまざまだと思います。

例えば、今後取り組みたい仕事に必要な資格を持っていないのであれば、資格取得に向けた学習が考えられます。

一方で、新たな資格の取得や具体的な職業訓練を必要としない方もいるでしょう。そのような場合には、自分がありたいと感じる姿に近づくために意識したいことや、今の自分から変えたほうがよいと感じることなどを考えてみてください。

目標となる先輩や上司がいれば、その人のどのようなところに魅力を感じるのか、そこに近づくために自分ができることは何か、と考えてみるのもよいでしょう。

ただし、ここで忘れないでいただきたいのは、目標とする先輩や上司と同じ人になることが目的ではないということです。

参考にしたいところや、自分にも取り入れたいところは取り入れながら、自分らしさも大切にしていただきたいと思います。

これから取り組むことを考える際にも、周囲の人を基準にするだけでなく、自分が大切にしたいことや、自分らしい働き方を意識してみましょう。

5. その他:自分だけでは整理できないことも書き留める

ジョブ・カード 様式1-1より

5つ目の項目は「その他」です。

ここでは、これまでの項目を踏まえた自己PRや、キャリアコンサルティングで相談したいことなどを整理します。

キャリアコンサルティングとは、キャリアコンサルタントとの対話を通じて、自分自身への理解を深め、これからのキャリアについて考えていく機会です。一人で考えているだけでは気づかなかったことに気づくきっかけにもなります。

ジョブ・カードを作成したら、必ずキャリアコンサルティングを受けなければならないというわけではありません。しかし、ジョブ・カードがうまく書けないと感じる方や、さらに自分自身を見つめ直したいと感じる方には、キャリアコンサルティングを利用することをおすすめします。

様式1-1の各項目を考えていると、自分の強みや将来の希望が明確になることもあれば、反対に、まだ答えが出ない問いが見つかることもあります。

例えば、次のようなことです。

– 自分の強みを、どのような仕事で生かせるのか分からない
– 今の仕事を続けるべきか、新しい仕事に挑戦するべきか迷っている
– 自分が大切にしたいことと、職場から求められる役割との間に違いを感じている
– 将来の方向性を考えたいが、何から始めればよいか分からない

こうしたことを無理に結論づける必要はありません。自分だけでは整理できないことや、誰かと話しながら考えたいことを書き留めておくことも有効です。

キャリアコンサルティングを利用する場合には、こうした疑問や迷いを相談の出発点にできます。

自分の考えを言葉にして誰かに話すことで、これまで気づかなかった自分の価値観や希望が見えてくることもあります。

また様式1-1の裏面は、ジョブ・カードの作成者が記入する必要はありません。キャリアコンサルティングを受けた際に、キャリアコンサルタントが記入するものであり、話し合った内容や、キャリアコンサルタントからのフィードバックなどが記載されます。

参考情報
従業員のキャリア支援に活用できる公的制度|無料の研修・面談・導入支援

自分のキャリアの方向性を探るために

ここまで、ジョブ・カードの様式1-1にある5つの項目について解説してきました。

これらの項目は、それぞれ独立したものではありません。

まず、様式2と様式3でこれまでの経験を振り返り、その材料をもとに、自分が何を大切にし、どのようなことに興味や関心を持っているのかを考えます。そして、自分の強みを理解し、それらを踏まえて将来の仕事や働き方を展望します。さらに、目指す方向に向けて取り組むことを考え、必要に応じて相談したいことを整理していきます。

つまり、様式2と様式3で過去を振り返り、様式1-1で将来を展望するという流れです。

ジョブ・カードとキャリア・アンカーを探る3つの問いには共通点がある

このように自分の経験や能力、価値観などを振り返ることは、自分のキャリアの方向性を探るうえで役立ちます。

キャリアについて考える際の参考となる理論に、エドガー・シャインが提唱した「キャリア・アンカー」があります。

キャリア・アンカーとは、仕事上の経験を重ねるなかで明確になっていく、自分の能力や動機・欲求、価値観に関わる自己イメージだとされています。自分がキャリアを選択する際に、何を大切にし、何を譲れないと感じるのかを理解する手がかりになります。

シャインは、キャリア・アンカーを探るうえで、主に次の3つの問いが重要だと考えました。

– 自分は何が得意なのか。どのような能力や強みを持っているのか
– 自分は何をしたいのか。仕事を通じて何を求めているのか
– 自分は何を大切にしているのか。どのような価値観を持っているのか

これらは、ジョブ・カードを作成する際に考えてきたこととも共通しています。

もちろん、ジョブ・カードを作成すれば、必ず自分のキャリア・アンカーが明確になるわけではありません。キャリア・アンカーを探るには、仕事上の経験を振り返り、自分の能力や動機・欲求、価値観について理解を深めていくことが必要です。

シャインの著書では、キャリア・アンカーの自己診断に加えて、他者との対話を通じてキャリア・アンカーを探っていく質問がエクササイズとして紹介されています。この二つの結果から、最終的にキャリア・アンカーを導き出します。

エドガーH.シャイン著 金井壽宏訳 『キャリア・アンカー 自分のほんとうの価値を発見しよう』白桃書房

ジョブ・カードとキャリア・アンカーのエクササイズは同じものではありません。しかし、これまでの経験を振り返り、自分の能力、動機・欲求、価値観を自らに問いかけるという点では、共通する視点があります。

大切なのは、世間一般で良いとされる働き方や、周囲から期待される役割だけで将来を決めないことです。自分自身の好き嫌いや大切にしたいことにも目を向け、それらを生かしやすい方向を探っていくことです。

もちろん、好きなことだけを選べばよいというわけではありません。自分の希望と現実の条件を踏まえながら、納得できる選択肢を探していく必要があります。

また、一度考えたキャリアの方向性が、将来にわたって変わらないとも限りません。新しい経験を通じて、自分の価値観や希望が変化することもあります。だからこそ、ジョブ・カードは一度書いて終わりにするのではなく、自分の経験や環境の変化に応じて見直していくことにも意味があります。

過去の経験を振り返り、自分の好き嫌いや大切にしたいことを感じ取り、それを生かしやすい道を探していく。

ジョブ・カードを、自分自身を理解し、これからのキャリアを考えるための手がかりとして活用してみてはいかがでしょうか。

さらにジョブ・カードを作ってみて、うまく書けない、自身をより見つめてみたいと感じた方は、キャリアコンサルティングを受けていただくことをお勧めします。ジョブ・カードを使ったキャリアコンサルティングは、弊社でもご利用いただけます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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自動車業界で開発業務を経験し、産業カウンセラー / 国家資格キャリアコンサルタント取得。グループアプローチによる課題解決支援も経験する。2023年にキャリアデザイン・メンタルサポート株式会社設立。静岡県を中心に企業向け人材定着・職業能力向上、メンタルヘルス支援を実施。またキャリア理論や公的機関の調査・法制度を分かりやすく解説し、企業経営者と働く人の双方に役立つ情報発信を心掛けています。

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