
シリーズ「仕事の地図から、キャリアを描く」【第1回】仕事選びに迷ったら、まず「仕事の地図」を見てみよう
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「自分に向いている仕事が分からない」
「どんな仕事を選べばいいのか分からない」
仕事選びについて相談を受けていると、こうした声を聞くことがあります。
そんなとき、私はまず「自分に合う仕事を探しましょう」とは言いません。
その前に、考えてみてほしいことがあります。
「そもそも、世の中にどんな仕事があるのか、どれくらい知っていますか?」
私は仕事選びについて、こんなことをよくお伝えしています。
人は、知らないことに興味を持てない。
例えば、旅行に行こうと思ったとき、知らない場所について「行ってみたい」と思うことは、なかなかありません。
まず、その場所の存在を知る。
写真を見たり、話を聞いたりして、
「こんなところがあるんだ」
「ちょっと行ってみたいな」
と思う。
仕事も、これと似ているのではないでしょうか。
もう一つ、仕事選びで私が大切だと考えていることがあります。
人は、知らない職業には就けない。
もちろん、偶然知らない仕事に出会うことはあります。
しかし、そもそも存在を知らなければ、その仕事を「やってみたい」「応募してみたい」という選択肢にすることはできません。
例えば、子どもの頃から知っている仕事といえば、教師、医師、看護師、会社員、警察官、消防士など、身近なものが中心になるでしょう。
大人になってからも、自分が実際に見たり聞いたりしたことのある仕事を中心に、仕事を考えていることは少なくありません。
だからこそ、仕事選びでは「自分を知ること」と同じくらい、「仕事を知ること」が重要なのです。
世の中には、どれくらいの仕事があるのだろう?
では、実際に仕事はどれくらいあるのでしょうか。
もちろん、「日本には○○種類の職業がある」と一つの数字で表すことは簡単ではありません。
職業にはさまざまな分類方法がありますし、同じような仕事でも、業界や職場によって異なる名称で呼ばれることがあります。
ただ、仕事の世界が私たちの想像以上に広いことを示す資料があります。
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が作成した「第5回改定厚生労働省編職業分類 職業名索引」では、公共職業安定所の求人票データなどから職業名を収集し、重複や表記を整理した結果、統合台帳に18,725の職業名が残っています。
これは「日本に18,725種類の職業が存在する」という意味ではありません。
あくまで職業分類のために整理された「職業名」の数です。
それでも、私たちが普段思い浮かべる仕事よりも、仕事の世界がはるかに広いことは感じられるのではないでしょうか。
仕事選びをするとき、いきなり「自分に合う仕事」を一つ決めようとすると、かえって難しくなることがあります。
それよりも、まず仕事の世界を広く眺めてみる。
いわば「仕事の地図を俯瞰してみる」こんな風に捉えてみるといいかもしれません。
地図を持たずに知らない場所を歩くと、どこに何があるのか分かりません。
でも、まず地図を広げてみれば、
「こんな場所があるんだ」
「ここにも行けるんだ」
と、今まで見えていなかった選択肢に気づくことがあります。
仕事選びも同じです。
まずは「どんな仕事があるのか」を知ってみる。
その中から、少しでも気になる仕事を見つけてみる。
そして、その仕事について詳しく調べてみる。
そんな順番でもよいのではないでしょうか。

仕事の地図を広げるために、ぜひ一度使ってみてほしいのが、厚生労働省の「job tag(ジョブタグ)」です。
job tagは、さまざまな職業について、
– どんな仕事なのか
– どのような仕事をするのか
– その仕事に就くにはどうすればよいのか
– どのような知識やスキルが必要なのか
– 労働条件にはどのような特徴があるのか
などを調べることができる職業情報サイトです。
2026年3月現在、556の職業が掲載されています。
ただ、job tagの魅力は、単に職業名を検索できることだけではありません。
私が特に紹介したいのが、「イメージ検索(地図)」です。
普通、仕事を検索しようとすると、
「営業」
「看護師」
「プログラマー」
「経理」
など、まず職業名を思い浮かべる必要があります。
ところが、まだ自分がどんな仕事に興味があるのか分からない人にとって、それは意外と難しいことです。
そこで、「イメージ検索(地図)」を使ってみます。
仕事の場面や環境などから職業を眺めていくことで、
「こんな仕事もあるのか」
という、今まで知らなかった職業との出会いにつながります。
これはまさに、仕事の地図を広げる作業です。
「自分は何になりたいのか」がまだ分からなくても構いません。
まずは、世の中にどんな仕事があるのかを眺めてみる。
「ちょっと気になる」
という仕事が一つ見つかれば、それだけでも十分なスタートです。
仕事選びでは、「自分は何がしたいのか」「何が向いているのか」と、自分自身に答えを求めがちです。
もちろん、自分を知ることは大切です。
でも、自分の中だけを見ていても、選択肢となる仕事を知らなければ、なかなか具体的なキャリアにはつながりません。
だから私は、
仕事を知ることと、自分を知ることの両方が必要
だと考えています。
まず仕事の地図を広げる。
その中で気になる仕事を見つける。
そして、その仕事について知る。
その経験を通して、自分が何に興味を持つのか、何を大切にしたいのかにも気づいていく。
「仕事を知る」と「自分を知る」は、別々の作業ではなく、行ったり来たりしながら深めていくものなのではないでしょうか。
「自分に合う仕事が分からない」と悩んでいるなら、いきなり答えを出そうとしなくても大丈夫です。
まずは、
「世の中には、どんな仕事があるんだろう?」
と考えてみてください。
知らなかった仕事を知ることで、初めて「ちょっと興味がある」という気持ちが生まれることがあります。
そして、興味を持った仕事について調べていくうちに、
「自分はこういうことが好きなのかもしれない」
「こういう働き方ならできそうだ」
「こんな仕事なら、自分の経験が生かせるかもしれない」
と、自分自身についても見えてくることがあります。
仕事選びの最初の一歩は、必ずしも「適職を見つけること」ではありません。
まずは、仕事の地図を広げること。
そのためのツールとして、job tagを一度使ってみてはいかがでしょうか。
次回は、job tagに用意されている「職業興味検査」や「仕事価値観検査」などを取り上げながら、もう一つのテーマである「自分を知ること」について考えてみたいと思います。