
11月11日は「介護の日」。介護離職を防ぎ、多様な社員が活躍できる職場づくり
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11月11日は「介護の日」です。
介護の日は、介護についての理解と認識を深め、介護サービスを利用する人やその家族、介護に携わる人たちを支援するとともに、地域社会での支え合いや交流を促進することを目的として、厚生労働省が2008年に定めました。
日付は、「いい日、いい日、毎日、あったか介護ありがとう」という語呂合わせから選ばれています。
介護は、特定の人だけに関係するものではありません。年齢や家族構成にかかわらず、誰もが家族の介護に直面する可能性があります。
企業にとっても、社員が介護と仕事を両立できる環境を整えることは、人材の確保や定着、そして多様な人材が活躍できる職場づくりにつながる重要な課題です。
今回は「介護の日」をきっかけに、介護離職の現状や、社員が介護を抱えながら働くことを支えるために企業ができることについて考えます。
総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、2021年10月から2022年9月までの1年間に、家族の介護や看護を理由に離職した人は約10万6千人でした。2017年の調査では約9万9千人であり、約7千人増加しています。
一方、2022年10月時点で、介護をしながら働いている人は約364万6千人に上ります。2012年の約291万人と比べると、約73万6千人増加しています。
これらの数字から、家族の介護をしながら働く人が増えていることが分かります。介護は、働く人の生活やキャリアに関わる身近な問題になっているのです。
企業にとっても、介護を理由とする離職は、経験や知識を持つ人材を失うことにつながります。採用や育成、業務の引き継ぎなど、新たな負担が生じることも考えられます。
介護離職を防ぐことは、社員本人の生活やキャリアを守るだけでなく、企業にとっても大切な取り組みといえるでしょう。
家族の介護をしていても、そのことを職場に伝えていない人がいます。このような状態は「隠れ介護」と呼ばれることがあります。
社員が介護について職場に相談しない背景には、さまざまな事情や気持ちがあります。
例えば、次のようなものです。
– 会社や同僚に迷惑をかけたくない
– 介護を理由に仕事上の評価を下げられたくない
– 今のプロジェクトから外されてしまわないか?
– 周囲と同じように働き続けたい
– 家庭の事情を職場の人に知られたくない
– まだ相談するほど深刻な状況ではないと考えている
こうした気持ちの背景には、仕事に対する責任感や、これまで築いてきたキャリアを大切にしたいという思いがあるのかもしれません。
また、介護が始まったばかりの段階では、本人も何をどこまで職場に相談すればよいのか分からないことがあります。介護の状況は変化していくため、最初は仕事との両立ができているように見えても、次第に負担が大きくなることもあります。
職場に相談できないまま無理を続けると、本人の心身への負担が大きくなり、仕事にも影響が出る可能性があります。その結果、仕事を続けることが難しくなり、離職を考えることもあるでしょう。
もちろん、介護離職に至る理由はさまざまであり、すべてが隠れ介護によるものではありません。しかし、社員が介護について相談してこないからといって、問題を抱えていないとは限らないのです。
企業は、社員から相談があったときに対応するだけでなく、社員が必要なときに安心して相談できる環境をつくっておくことが大切です。
介護と仕事の両立を考えることは、ダイバーシティ経営やインクルージョンの視点からも重要です。
ダイバーシティとは、年齢や性別、価値観、経験、働き方など、人それぞれの違いや多様性を認めることです。そしてインクルージョンとは、そうした違いを持つ一人ひとりが組織の中で受け入れられ、自分らしく能力を発揮できる状態を目指す考え方です。
介護に直面した社員の状況は、一人ひとり異なります。
– 親と同居しているか、離れて暮らしているか
– 介護を担う家族がほかにいるか
– 介護サービスを利用できる状況か
– 仕事と介護をどのように両立したいと考えているか
同じように家族の介護をしていても、必要な支援や働き方は異なります。
そのため、すべての社員に同じ対応をするのではなく、それぞれの事情や希望を踏まえながら、柔軟に対応することが求められます。
また、介護に限らず、育児や病気、家族の事情など、社員が仕事以外のさまざまな事情を抱えることはあります。
一人ひとりの状況を尊重し、誰もが働き続けられる職場を目指すことは、多様な人材が活躍できる組織づくりの一つといえるでしょう。
企業が介護離職を防ぐためには、介護休業や介護休暇などの制度を整えることが必要です。
2025年4月からは、改正育児・介護休業法が施行され、介護離職防止に向けた事業主の対応も強化されました。
主な取り組みとして、次のようなものがあります。
– 介護休業や介護両立支援制度などを利用しやすくするための雇用環境の整備
– 介護に直面したことを申し出た社員に対する制度の個別周知と利用意向の確認
– 介護に直面する前の早い段階での情報提供
– 介護のためのテレワーク導入に向けた環境整備
特に、介護休業や介護両立支援制度などについて、社員が申し出やすい環境を整えることが求められています。
ただし、制度を整備すれば、それだけで介護と仕事の両立が実現するわけではありません。
例えば、介護休業制度があっても、上司や同僚に気兼ねして利用を申し出られない職場であれば、制度は十分に活用されません。短時間勤務や柔軟な働き方が可能であっても、利用することで周囲に負担をかけると感じてしまえば、社員は利用をためらうでしょう。
大切なのは、制度を整えることに加えて、社員が安心して相談し、必要な制度を利用できる職場環境をつくることです。
そのためには、日頃から上司と社員がコミュニケーションを取れる関係を築くことや、介護について相談することが特別なことではないという職場の雰囲気をつくることも重要です。
また、企業が社員の家庭事情をすべて把握する必要はありません。プライバシーを尊重しながら、社員が必要なときに相談できる関係や仕組みを整えておくことが大切です。
介護と仕事の両立には、一律の正解があるわけではありません。
どのような介護を必要としているのか、仕事をどのように続けたいのか、本人が何を大切にしているのかによって、必要な支援は異なります。
そのため、企業には制度の整備だけでなく、社員一人ひとりの声に耳を傾ける姿勢が求められます。
しかし、職場の上司や同僚には、家庭の事情や仕事への思いを話しにくいと感じる社員もいるでしょう。会社に迷惑をかけたくない、評価に影響するのではないかといった不安から、本当の気持ちを伝えられないこともあります。
そのような場合には、社内の人間関係から少し距離を置いた第三者に相談できる機会を設けることも、一つの方法です。
弊社では、キャリアコンサルタントとして、社員一人ひとりの話を聴き、仕事やキャリアに関する悩みや課題を整理する支援を行っています。
介護保険制度や介護サービスに関する専門的な相談とは異なりますが、介護を抱えながら働くことへの不安や、これからの働き方について、第三者の立場から話を聴くことができます。
社員本人が自分の状況や希望を整理することはもちろん、企業にとっても、普段は把握しにくい社員の声や職場の課題を知るきっかけになると考えています。キャリアコンサルタントには守秘義務が課せられているので、隠れ介護になってしまうような不安を持った方にも、安心してご相談いただくことができます。
11月11日の「介護の日」は、介護を必要とする人やその家族だけでなく、働く人と企業にとっても、介護と仕事の両立について考える機会です。
社員が相談してこないからといって、問題を抱えていないとは限りません。また、制度があることと、安心して利用できることは同じではありません。
社員一人ひとりの事情や思いを尊重し、誰もが安心して働き続けられる職場づくりについて、改めて考えてみてはいかがでしょうか。