
シリーズ「仕事の地図」から、キャリアを描く【第2回】仕事選びでは「自分を知る」ことも大切――job tagの自己診断ツールを活用する
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前回のコラムでは、仕事選びの第一歩として、「仕事の地図を広げること」について考えました。
私は仕事選びについて、
> 人は、知らないことに興味を持てない。
> 人は、知らない職業には就けない。
とお伝えしています。
だからこそ、まずは世の中にどんな仕事があるのかを知ることが大切です。
しかし、仕事の地図を広げるだけでは、まだ仕事選びは終わりません。
そこで次に大切になるのが、
「自分を知ること」
です。
仕事選びをするとき、
「自分には何が向いているのだろう?」
と考える人は多いと思います。
でも、「向いている仕事」を考えようとすると、意外と難しいものです。
自分の興味や価値観、得意なことを、自分自身で正確に説明できる人ばかりではありません。
むしろ、
「何が好きなのか、自分でもよく分からない」
「得意なことと言われても思いつかない」
という人もいるでしょう。
そんなとき、自分について考えるための一つのきっかけになるのが、厚生労働省の「job tag(ジョブタグ)」に用意されている自己診断ツールです。
job tagは、職業について調べるだけのサイトではありません。
自分の興味や価値観、能力などについて考えるためのツールも用意されています。
代表的なものとして、
– 職業興味検査
– 仕事価値観検査
– 職業適性テスト(Gテスト)
– ポータブルスキル見える化ツール
などがあります。
それぞれ、見ているものが少しずつ違います。
職業興味検査では、さまざまな活動や仕事についての興味から、自分がどのような分野に関心を持ちやすいのかを考えることができます。
「人と関わることに興味がある」
「ものをつくることに関心がある」
「データや情報を扱うことが好き」
など、自分では漠然としていた興味を整理するきっかけになります。
また職業興味検査は特定の仕事への向き不向き、適性を診断するものではないことに注意しましょう。
仕事を選ぶとき、仕事内容だけが重要なわけではありません。
「安定して働きたい」
「自分の裁量で仕事をしたい」
「人の役に立つことを大切にしたい」
「専門性を高めたい」
など、人によって仕事に求めるものは違います。
仕事価値観検査は、そうした「仕事をするうえで、自分が何を大切にしたいのか」を考えるきっかけになります。
仕事では、興味だけでなく、さまざまな能力を使います。
Gテストでは、職業に関連する基礎的な能力について測定し、自分の得意・不得意を考える材料を得ることができます。
「自分では得意だと思っていなかったことが、意外とできる」
という発見につながることもあります。
仕事を選ぶとき、これからやりたいことだけを見る必要はありません。
これまでどんな仕事をしてきたのか。
そこで、どんな経験を積んできたのか。
どんな場面で力を発揮してきたのか。
そうした経験の中には、業界や職場が変わっても活用できるスキルが含まれています。
ポータブルスキル見える化ツールは、これまでの経験を振り返り、自分が持っているスキルを整理するための材料になります。
ここで、私は一つ注意しておきたいことがあります。
こうしたツールを使うと、どうしても、
「診断結果が自分に合う仕事を教えてくれる」
と思ってしまいがちです。
しかし、私はそのように使う必要はないと思っています。
診断結果は、あくまでも自分について考えるための材料です。
例えば、職業興味検査である分野への興味が高かったとしても、
「だから、この仕事に就かなければならない」
ということではありません。
反対に、結果に出てこなかった仕事を選んではいけないわけでもありません。
大切なのは、
「なぜ、この結果になったのだろう?」
「自分でも思っていたことだろうか?」
「意外だったところはどこだろう?」
と、自分自身に問いかけてみることです。
自己理解という言葉から、
「自分はこういう人間だと決めること」
をイメージする人もいるかもしれません。
でも、私はむしろ逆だと考えています。
自分を知るということは、
「今の自分について、少し解像度を上げてみること」
です。
興味は変わることがあります。
大切にしたいことも、人生の段階によって変わることがあります。
経験を積めば、「自分にはこんなこともできる」と気づくこともあります。
だから、自己理解は一度やったら終わりではありません。
ここで、前回の「仕事の地図」に戻ってみましょう。
例えば、job tagで知らなかった仕事を見つけたとします。
「この仕事、少し面白そうだな」
と思ったら、その仕事について詳しく調べてみる。
すると、
「人と関わることが多い仕事なんだ」
「自分が大切にしていることと、意外と重なっている」
と気づくかもしれません。
反対に、
「仕事内容は面白そうだけど、自分が大切にしたい働き方とは違うな」
と気づくこともあります。
その気づきをもとに、また別の仕事を調べてみる。
つまり、
仕事を知る
↓
自分を知る
↓
また仕事を知る
↓
さらに自分を知る
という循環が生まれます。
私は、仕事選びはこのようなプロセスで考えていくものだと思っています。
「自分に合う仕事を教えてください」
という気持ちは、よく分かります。
仕事選びに迷っているときには、できるだけ早く答えが欲しくなるものです。
しかし、自分のキャリアを一つの診断結果だけで決めてしまうのは、少しもったいないのではないでしょうか。
診断ツールを使って、
「自分は何に興味があるのか」
「何を大切にしているのか」
「どんな経験やスキルを持っているのか」
を考えてみる。
そして、それを仕事の地図と重ね合わせてみる。
その中から、気になる仕事を実際に調べたり、経験したり、人の話を聞いたりする。
そうやって、自分と仕事との関係を少しずつ具体的にしていくのです。
前回は、「知らない職業は選べない」という話をしました。
今回は、「自分を知る」という話をしました。
ここまで来ると、次にこんな疑問が出てくるかもしれません。
「では、自分に一番合う仕事を一つ見つければいいのでしょうか?」
私は、そうは考えていません。
世の中には数多くの仕事があります。
その中から「自分にとって唯一の適職」を探し出そうとする必要はないのではないでしょうか。
自分にできることを増やす。
経験を積む。
そして、たとえ最初から「ベストな仕事」と思えなかったとしても、その仕事の中で自分の好きなことや得意なことをどう発揮できるかを考える。
そんなキャリアのつくり方もあります。
次回は、この「適職を一つ探さなくてもいい」という考え方について、もう少し掘り下げてみたいと思います。
仕事選びは、正解を一つ当てることではなく、自分と仕事との関係をつくっていくことなのかもしれません。
<シリーズ「仕事の地図」から、キャリアを描く>
【第1回】仕事選びに迷ったら「仕事の地図」を広げてみよう